アフリカ・ソーセージの木(仮名)
Kigelia africana Benth. (1849)
← Bignonia africana Lam. (1783)
撮 影 : モザンビーク 、パキスタン
日本 沖縄・温室
科 名 : ノウゼンカズラ科 Bignoniaceae
属 名 : ソーセージノキ属 Kigelia Dc. (1845)
英 名 : sausage tree
原産地 : アフリカに広く分布
用 途 : 果実と樹皮が擦り傷・切り傷の薬として使われる。
 
ずっと以前に沖縄の南洋植物園で「ソーセージノキ」は目にしていた。
またパキスタン・ラホールのジーナ植物園にも、葉を茂らせた Kigelia があったが、ともにトレードマークの実は生っておらず、あまり実感がなかった。

上記2件は「ソーセージノキ」 Kigelia pinnata であったが、今回モザンビークの首都マプトの大学付属植物園で、よく似た本種 Kigelia africana を間近に見ることができた。
 
樹 形
これまで見た木と違い、根元で枝分かれしていて、逆円錐形のきれいな形をしている。高さは 約 10m。

木の横に立っているのはドライバー。
おばあさんが薬草を使っていたということで、彼も知識が豊富で、色々と教えてもらった。
 
垂れ下がる花序 幹の状態


木材も利用されるそうで、太い幹は刳りぬいてカヌーにするそうだ。
 
この木は枝が低いので、花も手に取れる位置にもあった。
モザンビークは南半球であるため、7月の季節は秋から冬へ向かうの時期。乾期で気温もさほど高くなく、一番いい時期であったが、春の花の時期ではないのは仕方がない。
 
本種は「コウモリ」が花粉を媒介するとのことで、写真を撮ったのは午後3時頃であるが、まだ開いていない。夕方に全開するものと思われる。
 
一本の房に咲く花の数は少ない。垂れ下がる「花軸」やそこからさらに分岐している「花柄」が異常に太い。
ソーセージを吊るすためであれば、後から徐々に太くなればよい。
コウモリが止まっても折れない様にしているのであろう。
 
半開き状態 花弁の半分を切除

外側は黄緑に赤が透けて見える

内側はどす黒い紅色
 
地面に落ちた花を集めて

 
ソーセージの実
この実の形はヒョウタンのようで、ソーセージノキとしては特殊例。
ただし、よく写真に載っているソーセージノキは Kigelia pinnata なので、本種 Kigelia africana の形はソーセージばかりではないのかも知れない。
長さ 30cm弱。
実は硬く、足で踏んでもすぐに割れることはなかった。
 
中身はジャガイモにココナッツの粉を混ぜたような、ザラザラとした感じで、タネが含まれているはずだが、はっきりしない。
ドライバーに聞くと「普通は」食べることはない、と言っていた。
 
ということは、「食べる事もある」ということ....。
 
 
パキスタン のキゲリア Kigelia pinnata
 
ラホールでの撮影は 10月。
同じく乾期であったがソーセージは生っておらず、「紐」だけがたくさんぶら下がっていた。
もしかしたら、実が落ちてしまったあとだったのかもしれない。
パキスタン、ラホール植物園
右下の白い服を着た人と較べると、相当な高さがある。
 
 
日本 のキゲリア Kigelia pinnata
 
撮影は、沖縄の方が10月下旬、京都は11月下旬であった。
沖縄 南東植物園 京都植物園 (温室)

 


複葉の葉の形が少しわかる。
 
種小名 pinnata は「羽状の」という極めてありふれた形容詞で、まったくおもしろみのない命名である。
名前の由来 ソーセージノキ Kigelia africana
 
ソーセージノキ 
ソーセージの木 : 実がソーセージに似ているため
正確には、ソーセージノキは Kigelia pinnata を言い、本種には和名がない。
「アフリカ・ソーセージノキ」としておこう。
種小名 africana : アフリカの という意味
初めに命名したのは18世紀生まれのフランスの生物学者 Lamarck (1744-1829) である。自然史博物館の動物学教授にもなったラマルクは、本種をビグノニア属として分類した。
 
アフリカ全土に分布するということであるので、適切な命名と言えよう。
Kigelia ソーセージノキ属 : 
『園芸植物大事典』によると、熱帯東アフリカ(モザンビーク)での呼び名に由来するとのことで、モザンビークで見ることができて良かった、ということになる。
『植物学名辞典』は アフリカ土名 で、いずれも Kigelia の意味については触れていない。
アフリカに 3種があるだけの、小さな属である。

同じノウゼンカズラ科に、細長い実が生る「ローソクノキ属」Parmentiera属 がある。
ノウゼンカズラ科 Bignoniaceae :
約120属 約800種があるという ノウゼンカズラ科。おもに熱帯・亜熱帯に分布している。
 
詳しくは「キバナノウゼンカズラ」の項に書いた ノウゼンカズラ科の記述を参照していただきたい。
 
 トピックス
 
ソーセージノキの効用
内部が赤い 壺型の花、 太くて長いソーセージの実。
ここから 男性の性機能に関する多くの迷信ができたという。
 
以下は、植物のことを色々と知っていたモザンビークのドライバー Miguel Durao氏 に聞いた Kigelia africana についての話。
 
・モザンビークでの別名は「男の木」。
・男性が果実の汁を飲むと、この実のように「改善される」?
・普通の女性はこの木を嫌う。 しかし、
・ある特定の、ほんの一部の女性は、この木が好き。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
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