モモタマナ 桃玉菜?
Terminalia catappa Linn.(1767)
科 名 : シクンシ科 Combretaceae
属 名 : モモタマナ属 Terminalia Linn.(1767)
英 名 : tropical almond , Indian almond
原産地 : 熱帯各地に広く野生化しているが、マレー半島が原産といわれている。沖縄や小笠原にも自生している。
用 途 : 種子の仁(ジン)は食用となり、アーモンドのような味ということだが食べたことはない。
 
材は硬く良質であるため、建築用材や家具に用いられる。
街路樹、庭木、海岸の防風林として植栽される。
撮影地: セネガル , ガイアナ協同共和国
地元の人に木の名前を聞いたところ、アーモンド・ツリーと教えてくれた。その時は「これがアーモンドか」と思ったわけであるが、「アーモンド・モドキ」であって、本物のアーモンドではなかった。
 
花の拡大 葉の形 と 青い実

穂状の花の先の方は雄花、元の方に雌花または両生花が咲く。
 

幼木 (7年程度?) ガイアナで 色づいた葉と茶色い果実
 


枝は水平に伸びる。
上の茶色いタネを、持っていた小型ナイフで割ってみた。苦労して「仁」を取り出してみたが、食べられるような感じではなかった。
 
ダカール森林公園の大木 切られた枝と樹皮のようす

 
所々に赤い葉 全面的に紅葉(2月)
右の写真は2月で、乾期に入ったところである。
木によって あるいは気候によってはあまり落葉しないケースもあるが、通常は乾期にはいる前に赤あるいは黄色に紅葉して、葉が落ちる。
大きな葉の柿の木 といったところだ。
 
名前の由来 Terminalia catappa
 
モモタマナ
モモタマナの由来は事典には載っていない。以下は私自身の考察である。
まず語句の区切りであるが、「モモ/タマナ」または「モモ/タマ/ナ」であることは間違いない。
 
「モモ(百)」には「多くの」という意味があるが、ここは「実の形がモモ(桃)の種に似ているから」であろう。
「タマナ(玉菜)」はキャベツのことである。つやつやした葉は確かに食べられそうであるが、肝心の「タマ」の部分がないので、疑問が残る。
 
「タマ」と「ナ」を分けて考えてみると、「モモタネ/ナ」が「モモタマ/ナ」に転訛したという案が浮かんだ。どうであろうか。
「桃の種のような実が成る菜っ葉の木」という意味である。
Terminalia モモタマナ属 : Terminalia Linn. (1767)
ラテン語の terminus (末端)に由来する。これはモモタマナの葉が枝の端にまとまって付くところから。(束生という)
250種あまりが熱帯各地に広く分布している。高木が多い。
種小名 catappa :
マレー語でモモタマナを意味する言葉 ketapang に由来する。
ketapangの意味は不明。
シクンシ科 Combretaceae
全世界の熱帯地方を中心に、約20属 500種がある。
combreta の意味は不明。
 
シクンシ属については 「シクンシ」 を参照のこと。
 
 参 考 1
 
 アーモンド
almond : Prunus dulcis D.A.Webb. (1967)
                ← Amygdalus dulcis Will. (1768)
バラ科サクラ属で、モモやスモモに極めて近い種である。
現在栽培されている種の元は、中央アジアから南西アジア一帯が原産のようであるが、すでに紀元前から他の地域に広がっていたらしい。
栽培地の筆頭はカリフォルニアで、世界の半分以上を占める。
ちなみに、ここ数年でアーモンドの卸値は3倍にもなっているとのこと。
アーモンドの意味は不明。
  種小名 dulcis : 甘味の という意味
アーモンドには様々な品種があり、種 (仁) の風味が「甘い」ものばかりでなく、「苦い」ものもある。そのアーモンドに「甘味の dulcis 」という偏った名前を付けたのは間違いであった。
アーモンドの花
アーモンドの花の実物を見たことはなく、右の写真は 春日建二氏撮影のものである。

アーモンドの花にはサクラ類のような花柄は無いが、花びらの形などは、モモよりもサクラの花に似ている。
栽培地では盛大な花見ができそうだ。
若い実 熟して裂開した中外果皮
モモの場合は皮(外果皮)を剥いて果肉(中果皮)を食べているが、アーモンドの栽培品種の中・外果皮(写真右の黄色い部分)は薄く、成熟期が近づくと乾燥して、自然に割れる点が大きな違いである。
食べる部分は、核(内果皮)の中の種子(仁 ジン)であるが、核も薄くて割れやすい品種が選択され、収穫のしやすさを向上させている。
 中国名 : 扁桃
手持ちの漢和辞典には、カラモモの別名。スモモの一種 とあったが、扁桃はアーモンドの現在の中国名である。「扁」は平たい の意味。
喉の両側にあるリンパ腺のひとつ「扁桃腺」はここから来ている。形がアーモンドに似ているため。
 
 参 考 2
 
 モモ
( 桃 ) : Prunus persica Batsch (1801)
              ← Amygdalus persica Linn. (1753)
同じくバラ科サクラ属で、中国原産といわれている。
実を食べ、花を観賞する。
 
モモの名の由来は色々な説があるが、代表格は @ 真実(マミ)が転訛したもの。A 実がたくさんなるから 百(モモ)。のふたつである。
しかし、前川文夫氏によれば、モモの「モ」は「ミ」であり、実とは「丸みのある身」すなわち「丸い実」であるという。外側が柔らかく、内側に硬い中心が一つだけある二重性から、それを「モモ」の二字の重複で表現したものである、という説を唱えている。
(『植物の名前の話』より)
  種小名 persica : ペルシアの という意味
紀元前に中国からペルシアに伝わり、その後ギリシアの博物学者テオクラストスが、間違えてモモを「ペルシコス」(ペルシアの果物)と名付けた。これが後世まで伝えられて、学名にも反映されたものである。
 
『植物の種』(1753)でリンネは、モモを Amygdalus属 (扁桃属) として分類したが、現在の分類ではこの属は採用されていないようである。
モモの花 モモの実

京都植物園
モモの実はいちめん細かい毛で覆われている。
古代にはこのモモを「ケモモ」と呼んだ。→ ヤマモモ参照
 
核(内果皮) 核の中の種子
一般にモモや梅干しの「タネ」と言っている部分は正確には核で、果実の「皮」が三層に分化した、その一番内側が木化して硬くなったものである。
ほんとうの「種子」は右の写真のように核の内部に有り、薄茶色の「種皮」をかぶっている。商品としてのアーモンドはこの部分。
 
モモの場合は核が硬く、割るのは一苦労であった。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        春日健二氏のホームページ「日本の植物たち」
        植物の名前の話/前川文夫
        漢和中辞典/角川書店
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 >五十音順索引へ