ヤエヤマアオキ 八重山青木
Morinda citrifolia Linn. (1753)
ドミニカ共和国
科 名 : アカネ科 Rubiaceae
属 名 : ヤエヤマアオキ属 
Morinda Linn. (1737)
英 名 : Indian murberry
ハワイ語: Noni
原産地 : 琉球諸島、小笠原諸島、台湾、中国、東南アジア、インド、オーストラリア、太平洋諸島 など
用 途 : 果実を搾ったジュースが健康食品として飲まれているが、効果は不明。
根が褐色の染料となり、インドやインドネシアで用いられる。インドネシアのバテックにも使われている。『植物の世界』
 
ドミニカの首都サント・ドミンゴの植物園で見掛けたもの。
グロテスクな実でバンレイシかとも思ったが、この植物園には名札がほとんど無く、現地では何の木だかわからなかった。
 
樹 形 葉のようす


大きい葉は30cmもある。
表は葉脈のところが凹んでいる。
小さな土手に植えられており、右側のテラスに登って上から写真を撮ることができた。 道路にリュックが置いてある。
 
木の高さは2m程しかなかったが、Wikipediaには、高さ数十メートルになる とあった。
 
栽培畑では、収穫しやすいように小さく作ることであろう。
 
咲いた先から太ってくる
花は初めから根元が合着した状態となっており、下の方から咲き始める。花の大きさは 1.5cm ぐらい。
 
トップの写真のように次々と実ができているが、どのくらいのスピードで大きくなるのかは不明。
毎日花が2輪咲き、一日で受粉すると仮定すれば、左の写真で約1ヶ月経つことになる。
 
すべて咲き終わった 成熟した実
大きいもので 長さ10cm。  やや黄色みを帯びた白い色。
この写真のみ
[ Copyright ] Dr. Gerald Carr
 (Univ. of Hawaii )
 
名前の由来 ヤエヤマアオキ Morinda citrifolia
 
ヤエヤマアオキ
自生地では海岸に生え、種子の一部分に空気の溜まった「気室」があるために、海流によって広く散布されるらしい。日本では八重山諸島(だけではないと思われるが)に自生しているために「ヤエヤマ」の名が付けられた。
 
「アオキ」はアオキ科のアオキに似ているためではなく、艶やかな常緑の葉を表したものと思われる。
ヤエヤマアオキの葉 アオキの葉

 
種小名 citrifolia : ミカン属の如き葉の という意味
これもどうして「ミカンの葉」なのか、理解に苦しむ命名である。
ミカンの葉は特に特徴のない、先の尖った楕円形の葉が多い。
ヤエヤマアオキのような、薄くしなやかで、葉脈が目立つ葉とは異なる。
ナツミカンの葉 ユズの葉

 
Morinda ヤエヤマアオキ属 : インドのクワ という意味
ラテン語の morus 「クワ(桑)」と indica 「インドの」の合成。
 
クワあるいはクワ属の実は、ヤエヤマアオキと同じく「複合果」である。
 
リンネは『植物の種』(1753)に3種の Morinda属を記載しているが、そのうちの2種は同じもので、結果的には「ヤエヤマアオキ」と「ハナガサノキ Morinda umbellata」の2種で、ともにインド原産としている。
 
クワの実
クワ科 クワ属
パンノキの実
クワ科 パンノキ属

ヤマグワと思われるが
はっきりしない。
 

Artocarpus altilis
 
アカネ科 Rubiaceae : ラテン語 ruber 赤の意から。
約 500属 6,000種もあるという大きな科であるが、アカネ科のイメージは薄い。まず アカネという植物に馴染みがない。本州、四国、九州から東南アジアに広く見られる とあるが、見たことがない。
 
そこで、いつも日本の植物の写真で助けていただいている、春日健二氏 (kasuga@mue.biglobe.ne.jp)のホームページ「日本の植物たち」の中からお借りした。
アカネ
氏のホームページの説明によると、葉の付き方が「4輪生」なので花がなくてもすぐに判るそうだ。

アカネの名は「赤い根」であり、この植物の根から「日本の色」のひとつである「茜色」の染料が取れる。
ただし 触媒を使って初めて 赤い色になるという。
 
こんな感じでしょうか。
ディスプレイによって色が違いますが....。
 
コーヒーノキ
アカネ科の代表選手は コーヒーの木。それからクチナシ。園芸店にはペンタスがある。
コーヒーノキの葉はヤエヤマアオキに良く似ている。

 
 ノニ・ジュース
 
ヤエヤマアオキの果実を搾ったジュースが健康食品として人気である。
 
「タヒチアンノニ TM」という商品が米国モリンダ社の登録商標というのはよい。しかし「モリンダ TM」も登録されているのはどうかと思う。
 
タヒチアンノニ社の販売方法は一種の「マルチ商法」であり、定価は1リットル 7,329円という驚異的な価格である。
直接の販売者である「ディストリビュータ」へのキックバックが多量に含まれているためである。
 
割引価格で購入するためには、会員になり、毎月決まった本数を定期的に購入するのが基本となる。

また なぜノニジュースが体にいいのか、親切な説明がない。
日本法人 タヒチアンノニインクのホームページを見たが、「ノニについて」の中の「ノニの成分」の項には次のような文が載っているだけである。
 
「神からの贈り物」として大切に扱われてきた「ノニ」。昔からタヒチの人々は、ノニを崇敬し、果実、葉、そして種子を、彼らの生活と身体のバランスを整えるために用いてきました。そして現在、タヒチの人々が先祖代々健康維持に役立ててきたこのノニを基本としたタヒチアンノニ製品が開発されています。
これでは ノニの成分はまったくわからない。
 
昔から利用されてきたという割には、植物事典には根の染料以外の記述がない。

発売から10年以上経って、今やモリンダ社の製品を安い価格で販売するサイトもあるようだ。
なにもタヒチ産である必要はないわけで、インドネシア、チリ、沖縄産もある。
創業者の優位性はいつまで続くであろうか...。
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        植物の種/リンネ/復刻版・植物文献刊行会
        春日健二氏のホームページ「日本の植物たち」、
        ハワイ大学 Dr. Gerald Carrのホームページ
               (転載許可取得済み)
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