キングストンの街の日本人客が多かったペンションの庭と、ホープ植物園でもとてもきれいに咲いていたつる植物。
ノウゼンカズラ科ということは一目でわかるが、じつは伊豆熱川のバナナワニ園で、以前に見ていたものであった。
熱川では花は咲いておらず、ホープ植物園では名札がなかった。
帰国後に調べていて、ようやく両者が一致したものである。
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ホープ植物園のニンニクカズラ棚 |

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3つの つぼみ |
青空に栄える |

咲き始めは濃い色だが、日が経つにつれて退色する。
ただし、何日間咲いているのかは不明。 |
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枝 (つる) の様子 太さは1cm前後 |
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短い枝に2枚の葉が付いているのか、それとも 2枚の複葉の葉がつるに対生しているのか、はっきりしない。
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葉の様子 |
福岡植物園温室 鉢仕立て |
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撮り方が悪くて、葉の付き方がわかりにくい。
つやつやした2枚の葉の間から、巻きツルが出て絡みついていく。 |
葉、花、若い実 |
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この葉は小さく、長さは 花と同じ 6cmくらいである。
大きいものは 10cm以上になる。
実はまだまだ若い。
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名前の由来 ニンニクカズラ Pseudocalymma alliaceum |
ニンニクカズラ : ニンニクの臭いがする ツル植物 |
ジャマイカの現地では、ニンニクカズラということがわかっていなかったので、試してみなかったが、花や葉を揉むとニンニクの臭いがするために名付けられたものである。 |
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バナナワニ園では枝を袋に入れて、来園者に手に取って、臭いを確かめるようになっている。 |
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種小名 alliaceum : ニンニク臭のある という意味 |
『植物学名辞典』には上記に加えて、ネギ属の如き という訳も載っていた。 |
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Pseudocalymma属 プセウドカリマ属 : |
プセウドの本来の意味は「偽の、まがい物の」であるが、学名での Pseudo〜 は「〜に似た、〜まがいの」ということで使われる。
和名では「〜モドキ」がこれにあたる。
一方の calymma は『園芸植物大事典』によると、ギリシア語の kalymma (覆い) に由来するそうだが、ではなぜ「偽の覆い」あるいは「calymmaに似た」なのかの説明がない。
別途 「Calymma属」があるのなら、その属に似ているが少し違う ということになってわかりやすいのだが、それもない。
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本種は150年もの長きにわたって Bignoniaツリガネカズラ属とされてきたが、20世紀になって Pseudocalymma属が定義され、変更された。 しかし事典には両者の違いについての比較解説もなく、詳細は不明である。 ツリガネカズラ属の葉は3枚の複葉であるため、「葉の付き方の違い」なのかも知れない。 |
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ノウゼンカズラ科 Bignoniaceae |
基準属は Bignonia属 であるが、その和名はツリガネカズラ属である。(ツリガネカズラ一種のみの単型属)
理屈で言えば Bignoniaceaeは、ツリガネカズラ科とすべきである。
詳しくは「キバナノウゼンカズラ」の項に書いた ノウゼンカズラ科の記述を参照していただきたい。
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ニンニクカズラ |
← ニンニク 大蒜 Allium sativum Linn. (1753) |
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ユリ科の多年草。
『植物の世界/朝日百科』によるとその歴史は極めて古く、なんと紀元前3,000年以前のエジプトの墓から、ニンニクの粘土模型が見つかっているという!
中国 4,000年の歴史どころではないが、どこの国でも料理にはこれがないとお話しにならない。
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原産地は中央アジアのようで、種小名 sativum が「耕作された」という意味であり、いかに早くから各地で栽培されていたかを示すものである。 しかし、本来植物の特徴を捉えるべき種小名に「耕作されている」という名を付けるとは! リンネの『植物の種』296〜7ページを見ると、参考文献として挙げられているボーアンの『植物の劇場総覧』(1623年刊行)に、Allium sativum そのものの名称がある。
ボーアンはスイスの植物学者で、不完全ながらも 植物の名称を2つの言葉で表す「2名法」を始めた人である。
リンネは自分で名付けたわけではなくて、古い文献に使われている「不適切な名前」を選んだものである。
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属名の Allium の由来は『園芸植物大事典』では、ラテン語の alere あるいは halium (臭い、匂い) から、が第一義であるが、牧野の『植物学名辞典』では、ケルト語の
all (灼く) から、となっている。
「匂い」の方が納得できるが、ニンニクの匂いの成分は細胞膜が壊されて、空気に触れて、初めて生じるそうだ。
「焼きニンニク」が匂わないのは このためだ。
この属名も、学名上はリンネが命名したことになっているが、リンネの50年前に生まれたトゥルヌフォールが命名していたものである。
学名の出発点を1753年刊行の『植物の種』に決めたために、リンネの名前ばかりがたくさん出てくるが、その何世紀も前からの、たくさんの学者が研究を重ねた結果である。
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昔は日本では扱われていなかったが、「ニンニクの芽」と称して、花茎を炒め物などに使うようになった。
ところが昨今の「中国餃子」騒ぎで、中国産のニンニクの芽を扱わない店が多くなっている。
冬のこの時期には、国産のニンニクはお休みである。
ニンニクの鱗茎の方は乾燥貯蔵したものなので、オールシーズン。
今は青森産が全盛である。
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参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
園芸植物大事典/小学館、
週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎 |
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