カブダチクジャクヤシ
株立ち孔雀椰子
Caryota mitis Lour. ( 1790 )
別 名 : コモチクジャクヤシ 子持ち孔雀椰子
科 名 : ヤシ科 Arecaceae または Palmae
属 名 : クジャクヤシ属 
Caryota Linn. ( 1737 )
英 名 : Burmese fishtail palm , clustered fishtail palm , tufted fishtail palm
原産地 : インド、マレーシア、南ベトナム、ジャワ、フィリピン諸島
用 途 :
 
観賞樹、装飾樹として栽培
 
撮影地 : ドミニカ共和国 、日本 温室
 
 
いつもは必ず葉も撮るのであるが、名前の由来に関係する肝心の葉の詳細写真を忘れてしまった。
木の高さは 約5m。
 
株立ちの幹の様子 京都植物園のもの

 

事典によると、環状の葉の痕が残るのがこの種の特徴 とある。
 
確かに、左の写真は竹のようだ。
そして「トゲ」はない。

京都植物園のものは温室内であるため、現産地と較べると日照が十分ではなく、また樹木の間隔も混み合っているため、節と節の間がひょろ長いのではないかと想像している。
花は終わってしまったようだが、株立ちの異なる幹に、できたての実から 熟した実まで、揃っていた。
 
そして 左上の写真に注目して欲しい。
 
同じ幹の、上の方にある実の方が熟成が進んでいる。
現地では気がつかなかったが、『植物の世界』の記述によると、クジャクヤシ属の種はまず幹が伸びるだけ伸び、そのあと上のほうから順次花序が出てきて、下に向かって開花していくそうだ。
この点は一般の植物とは大いに異なる。
 
一番下の花序が終わると、その幹は枯れてしまうとか。 
まだまだ若い実 若い実

 
赤も混ざった成熟した実
開花から成熟するまでの期間は事典に記載がなく、不明である。
 
名前の由来 カブダチクジャクヤシ Caryota mitis
 
和名: カブダチクジャクヤシ 株立ちする孔雀椰子 の意味
クジャクヤシ Caryota urens の幹は単一で、高さ 12~18mになる。『園芸植物大事典』
 
これに対して、本種は株立ちとなるところから名付けらた。
事典の高さの記載は 3.5~12mとなっている。
 
両者のもうひとつの違いは、本種の実の房の長さが 30~50cmであるのに対して、クジャクヤシは3~3.6m、ときに6m!と極めて長い点である。
葉の大きさも格段に大きいようだ。
種小名 mitis :
牧野ほかによる『植物学名辞典』には、「柔和の、緩和なる、刺等のなき」と出ている。
しかし 『羅和辞典』を見ると、「柔らかい、緩んだ、甘い、熟した、平静な、落ち着いた、穏和な」であり、刺に関する意味は含まれていない。
 
もうひとつの辞典『植物学ラテン語辞典』にも同様である。
 
とすれば、やはりヤシ属にはめずらしい「二回」羽状複葉の、ふわりと垂れ下がった葉の様子を表した形容詞であろう。
命名者 Joa de Loureiro の生没年ははっきりとしていないが、1710年代に生まれ、1790年代に死亡しているので、リンネと同じ時代である。
リンネによる「クジャクヤシ Caryota urens 」よりは、40年近く後に名付けられたものである。
英名: fishtail palm
『園芸植物大事典』には カブダチクジャクヤシの英語名として、3つの fishtail palm を載せている。
 
 Burmese fishtail palm : ビルマオビレヤシ
 clustered fishtail palm : 群生(株立ち)オビレヤシ
 tufted fishtail palm : 房状オビレヤシ
である。
 
小葉の形を「尾鰭 オビレ」に例えたものであるが、fishtail palm そのものではないということは、「fishtail palm」と呼ばれる別の種がある と考えるのが妥当であろう。
 
和名で考えれば元祖はクジャクヤシ Caryota urens ということになるのだが、『園芸植物大事典』のクジャクヤシの項に書かれている、5つの英語名の記載には、ひとつも fishtail palm という名が見あたらない。
 
Caryota クジャクヤシ属 : 
Caryota カリオタは、ギリシア語の「karyon 堅果」 あるいは「karyotos クルミの様な」に由来する。『園芸植物大事典』
 
同事典にはクジャクヤシ属の英名として、fishtale palm が載っている。
また中国名も「魚尾葵属」である。
ヤシ科 Arecaceae : 
ヤシ科の基準属 Areca に由来して ヤシ科は Arecaceae と呼ばれるが、Palmae も使われる。
 
約 200属 約 2,680種があるそうだ。
 
 
カブダチクジャクヤシ ←
 
 クジャクヤシ Caryota urens Linn. (1753)
 
何度も出てくる「クジャクヤシ」だが、カブダチクジャクヤシと較べると、葉のサイズが大きいために、垂れ具合も大きい。
 
ヤシ科の葉はほとんどが細長い葉の「複葉」あるいは、うちわのような「掌状」である。
複葉のトックリヤシ 掌状のワシントンヤシ
クジャクヤシ属はヤシとしては珍しい「二回羽状複葉」であるため、名前を付けるに当たっては、葉に注目するのは当然のことである。
 
クジャクの尾に由来するといわれる和名「クジャクヤシ」の注目点はどこであろうか?

詳しくは「クジャクヤシ」の項を参照されたい。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        羅和辞典/研究社、
        植物学ラテン語辞典/豊国秀夫、
        Wikipedia、
        植物の種/元本リンネ/植物刊行会
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