クジャクヤシ 孔雀椰子
Caryota urens Linn. ( 1753 )
科 名 : ヤシ科 Arecaceae または Palmae
属 名 : クジャクヤシ属 Caryota Linn. (1737)
英語名 : jaggery palm , kittul tree , sago palm , toddy palm , wine palm
原産地 : インド、スリランカ、マレー半島
用 途 :
 
幹からデンプン。花柄から採る汁より糖を作る。
幹は用材としても使われ、繊維から紐を作る。
 
撮影地 : 中国
 
 
中国雲南省の省都 昆明市街地北部に位置する、「金殿公園」(有料) に植えられていたものである。
 
葉を除いた幹の高さは2mほどしかなく、12〜18mにもなるというこの木からすると、まだ植えられたばかり、と言えよう。
若いだけに花や実はなく、写真としてはさびしいページとなる。
 
それでも 葉の大きさだけは「1枚」で2.5mはあった。
 
 
金殿公園の隣に、1999年に花博の会場となった場所が公園となっており、(これも有料で入場料が高かった) 温室もそのまま使われていた。

そこには樹齢が何年かはわからないが、高さ10mはあろうかというクジャクヤシが2本。
 
右側大写しの写真にラベルがあるが、そのすぐ下あたりで直径 40cm弱。温室の中でこれである。
横にいる子供と較べても、その太さがすごいことがわかる。
日本の温室では栽培されないわけだ。
 
幹には葉の痕がはっきりと環状に残る。

この木に較べると金殿公園のものは可愛らしいもので、「幹」の部分は葉柄の苞に被われていて、まだ見えていない。
 
葉の様子 新葉

 

 
  .
 
根本部分は急に太くなっている
羽状複葉のそれぞれの葉(小葉)は、一枚で10cmぐらいの大きさがあり、さかなの胸びれの形をしている。
2辺は直線だが、曲線部分は二重の鋸歯となっている。
 
中段の葉の写真は、先端方向から幹の方を見て撮影したもの。
幅も2m以上ある。
新葉部分のアップ
右上の写真、新葉の黄土色は細かい毛の色である。
 
縦の筋はあるものの、展開した時の細かな葉を予測させるものなどは全く無く、鉄のように硬くて、一角獣のツノのようだ!

 
名前の由来 クジャクヤシ Caryota urens
 
和名: クジャクヤシ 孔雀椰子
広がった葉を孔雀の尾になぞらえたもの。
 
まるで 霧の中で羽ばたく大きな鳥のようだが、「クジャクヤシ」の名は、一枚の葉を孔雀の雄が羽を広げた形としたものであろう。
 
中央の細長い避雷針状の棒は新葉である。
 
インドクジャク


Wikipedia より
種小名 urens : キン毛ある、苛性の
牧野氏ほかの『植物学名辞典』には見慣れない漢字が使われていた。
 
「キン毛」は「火偏に欣」という字で「焼く」という意味である。
「苛性」と併せて考えると、「触ると炎症を起こす毛」ということであろう。
「苛性」のほうは「苛性ソーダ」でわかるように、皮膚やその他の動物組織に激しく作用し、腐食させる性質である。
 
もう一つの辞典『植物学ラテン語辞典』には、刺毛ある、痛がらせる とあった。
 
言葉の意味はわかったが、『園芸植物大事典』のクジャクヤシの項にはそれらしき説明は載っていない。
 
クジャクヤシは幹からデンプンを採取したり、用材としたり、酒やロープを作るなど昔から利用されており、原産地のインドでは重要な植物のひとつとなっているそうだ。
 
むしろ、クジャクヤシ属は「刺がない」のが特徴のひとつであり、命名者のリンネは間違った名前を付けたようだ。
 
強いて言えば、葉柄の周りに粗い糸が付いている点であろうか。
 
この網状になった糸は、巨大で重い葉が、幹から剥がれて折れてしまうのを防いでいる。
英語名 :
jaggery palm : jaggery はヤシ糖のことで「ヤシトウヤシ」となる。
 
kittul tree : クジャクヤシのことであるが、kittul の語源は不明。
 
sago palm : 幹からデンプンを採るサゴヤシ (Metrozylon sagu) は別種であるが、クジャクヤシも澱粉を採るので同じように呼ばれる。
 
toddy palm , wine palm : toddy は樹液あるいは樹液から作ったヤシ酒を指す。
 
 
クジャクヤシの英語名としては、尾鰭 や 孔雀 に関係するものはないようだ。
 
カブダチクジャクヤシ には fishtail palm の名がある。
Caryota クジャクヤシ属 : 
Caryota カリオタは、ギリシア語の「karyon 堅果」 あるいは「karyotos クルミの様な」に由来する。
 
果実が硬いのは、カブダチクジャクヤシで確認している。
あるいは形がクルミに似ている ということだろう。
 
約20種が熱帯アジアからオーストラリアに分布する。
『園芸植物大事典』
ヤシ科 Arecaceae : 
ヤシ科の基準属 Areca に由来して ヤシ科は Arecaceae と呼ばれるが、Palmae も使われる。
 
『園芸植物大事典』によると Areca は、インド南西部マラバル地方での呼び名 areec によるといわれている。
 
約 200属 約 2,680種があるそうだ。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
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