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科 名 : | ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae (マメ科 Fabaceae) |
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属 名 : | サイカチ属 Gleditsia Linn. ( 1742 ) |
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英語名 : | Japanese honey locust | |||
原産地 : | 本州、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸 | |||
用 途 : |
莢(サヤ)にはサポニンが含まれるため、昔は石鹸の代わりとして用いられた。 また、莢や種子は利尿・去痰の漢方薬として使われる。 材は建築・家具に用いる。 |
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撮影地 : | 日本 ![]() |
サイカチは、枝や 特に幹に、長さ 10cmにもなる鋭いトゲを出す。 これは枝が変化したものだそうだが、とにかく凄まじい。 目でも刺そうものなら、失明してしまう。 このため、多数の果実が生って落下する事と併せて、街路樹には適さない。 |
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トゲの様子 | |||||||||||||
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出たばかりのトゲは、青い色をしている。 時が経つにつれて、濃い茶色→焦げ茶色→黒に近い茶色 と変化していき、古くなると白っぽく枯れた状態となるが、最後までその鋭さは変わらない。 幹からだけでなく、細い枝にもトゲが付く。 葉の付け根 (葉腋 (ヨウエキ) )から刺が出ている事によって、このトゲが 「枝が変化したもの」という説明に納得ができる。 |
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単純な偶数羽状複葉 | 複葉 + 2回複葉 | ||||||||||||
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短い枝(短枝)に付く葉は「偶数羽状複葉」である。 小葉は少しだけ湾曲したものもあり、きれいな緑色の葉である。 ところが注意してみると、長く伸びた枝の先などには、複葉と2回羽状複葉が組み合わされたもの(右の写真)や、通常の2回羽状複葉がある。 前掲の写真でも、枝に近い3枚は、小葉が6枚と少ないが2回複葉になっている。 自然の不思議、と言えよう。 |
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つぼみ (雄花?) | 花 (雌花?) | ||||||||||||
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事典によると、花は雌花、雄花、または両生花が付く「雌雄同株」ということである。 さらに、『樹に咲く花』の著者 茂木 透さんの観察によると、同じ木でも、雄花のみが咲く年、雌花のみが咲く年、両方とも咲く年があるそうだ。 これもまた、驚きである。 |
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若い実 | 12月初めの実 | ||||||||||||
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熟した実のアップ | 種子 | ||||||||||||
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莢の長さは 15~30cmで、軽くねじれるか螺旋状になる。 若い実の写真は、小石川植物園の地面に近いところに生っていたもので、日当たりが悪いために極めて実の入りが悪く、20cmの莢に、小さなタネが3・4個というありさまであった。 日当たりのいい所で育ったものは、同じサイズに15個もはいっている。 種子の大きさは、長さ8~9mm。(切手のサイズは21×25) |
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サイカチのサヤには、サポニンという泡立つ成分が含まれている。 戦時中、石鹸の配給がストップした時には、ムクロジ、エゴノキとともに、サイカチも石鹸の代用として使われたそうだ。 試しに実をちぎって水に漬け、泡立ててみた。 かなり熟した莢であったため、泡立ちは今ひとつであったが、もっと若いものならどうなのであろうか? |
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名前の由来 サイカチ Gleditsia japonica | |||||||||||||
和名: サイカチ : 昔の名前「サイカイシ」がなまったもの |
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種小名 japonica : 日本の という意味 | |||||||||||||
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Gleditsia または Gleditschia サイカチ属 : 人名にちなむ | |||||||||||||
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ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae : | |||||||||||||
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トピックス | |||||||||||||
さいかち坂 と 漢字名 総武線 水道橋駅から、線路の南側をお茶の水の方に登る坂を「さいかち坂」という。 説明板によると、むかし この坂の脇にサイカチの木が生えていたために名付けられた、ということである。 サイカチの木は一度はすべて無くなったようだが、坂の名前にちなんで、歩道脇のスペースに後から3本が植えられたようだ。 |
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トップの「トゲ」の写真は元の3本のものではなく、木から落ちたタネからの実生苗が大きくなった木のトゲである。 線路際の斜面に生えているために枝を切られることがなく、横に長く伸びた優雅な枝振りとなっている。 |
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さて、 この坂にも名前を示す標識が立てられており、千代田区教育委員会によるその立て札は、「皀角坂」となっている。 |
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「皀角坂」の標識 | 大分市 ジャングル公園の名札 | ||||||||||||
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植物名としての「サイカチ」や「漢方の名前」の表記に、事典などによって数種の漢字が使われているので 調べてみた。 |
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まず坂の標識であるが、2006年にプレートを張り直した気配がある。 そして『新編江戸志』という文献に、 「むかし皀角樹多くある故に、坂の名とす。」とかかれていることを引用している。 引用する時に、ミスをすることはないであろう。 だからこそ、堂々と「皀角坂」と明記しているわけである。 |
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『樹と花の大事典』の見出し、漢方名も「皀」の字を使っている。 |
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ところが、通常使われているのが「皂莢」の字である。 これが正解だと思われるが、朝日百科『植物の世界』には、「漢名としての皂莢は、本来 Gledistia sinensis を指す。」という注意書きがある。 あくまで「本来」であって、皂莢が間違いだと言っているのではない。 各国の一般名称 (common name) やその表記方法については、「内政干渉」する必要はなく、日本では「サイカチ」を皂莢とし、中国では「シナサイカチ(仮名)」が皂莢でも問題は ない。 その「シナサイカチ」の中国名だが、『園芸植物大事典』では「皁莢」となっている。 以下は『字通』/白川 静 および 『日本国語大事典』/小学館 で調べた結果である。 |
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となると、正しくは現在の中国名「皁莢」ということになる。 また、皂莢 の意味が、黒いサヤだということがわかる。 |
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余談であるが、坂の途中に「皂莢坂ビル」という名の建物がある。 こちらは 正しい字を使っているが、屋上のビル名は「さいかち坂ビル」と平仮名である。 漢字では読み方がわからないためであろう。 |
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皂莢坂ビル | |||||||||||||
![]() 玄関脇の植え込みに、サイカチの木が1本だけ植えられ、20cm強になっていた。 もちろん幹からは刺が出ている。 |
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そして、読み人知らずの小さな句碑があった。 皂角子の 実はそのままの 落葉哉 |
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参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、 園芸植物大事典/小学館 週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、 植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、 樹と花の大事典/植物文化研究会 漢和中辞典/角川書店、 字通/白川 静、 日本国語大事典/小学館 |
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