ムユウジュ 無憂樹
Saraca indica Linn. ( 1767 )
パキスタン 、日本 温室
科 名 : ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae
(マメ科 Fabaceae)
属 名 : ムユウジュ属 
Saraca Linn. (1767)
英 名 : asoka , sorrowless tree
原産地 : インド南部 および スリランカ
用 途 : 庭園樹。またインド、ミャンマー、タイの寺院にはこの木の並木が多い。(園芸植物大事典)

 

紀元前5世紀(一説に紀元前6世紀)にサーキヤ(Sakiya)族の国王の長男として生まれたゴータマ・シッダールタ、後のブッタ。
懐妊中の母マーヤーが現在のネパール国にあるルンビニーで、この木の花を見て右手でひと枝折ろうとした時に、右脇腹から生まれたという言い伝えのある木である。
 
パキスタン北西部の街ラホールの大きな植物園、ジーナ植物園で見たものだが、訪れたのは10月で、残念ながら花の時期ではなかった。
 
樹高は5m 幹の様子

 
事典によると、高さは6〜8mとそれほど大きくなる木ではない。
この木は5m程度であったが、根元の太さは20cm以上あった。

新しく出てくる葉はピンク色をしていて、大きくなるまで長く垂れ下がっている。

 
伸び出した葉 枝先に垂れ下がる"2枚"の複葉

 
ムユウジュの葉は偶数の羽状複葉で、小葉の数は3〜6対である。

右の写真はかなり大きくなってきた若葉。葉軸はまだピンク色をしている。

 
京都植物園温室。
 
ムユウジュの花は日本の温室ではなかなか咲かない、滋賀県の草津市立水生植物公園では咲くが2月から3月だ、という話を聞いて、実物を見るのは先のことだと諦めていた。
 
ところが、ことし5月の初めに上の写真の京都植物園に行ったところ、なんと2番咲きと思われる小さな花序を発見!
普通の人は、すぐ近くの「ヒスイカズラ」に見とれて素通りしている。
 
ムユウジュの花 ムユウジュの実
残念ながら花はまだ開いておらず、匂いを嗅ぐこともできなかった。感激はいまひとつだが、花を見られた好運には感謝。
 
しかも花だけでなく、薄い「カキモチ」のような実まで生っていた。
色は新葉と同じような紫色である。種子の存在感があまりないが、これからもっともっと大きくなるのであろう。
 
Wikipedia の解説によると、赤い花びらに見える部分は先が4つに分かれた萼で、花の色は初めは黄色、しだいにだいだい色から赤に変わる ということである。
イラストによると短い花柄があるが、実物は葉の付け根に咲いているように見えた。

この絵では雄しべがとても目立っているが、実際の花はこれほどではないようだ。

 
ラベル 解説
ジーナ植物園はかなり広く、樹木の数も多いが、感心なことにほとんどの木に「ラベル」が付いている。
通常のラベルは、学名と現地名が書かれた素っ気ない金属板で、幹に釘で打ち付けられているが、ところどころに解説付きの 幅60cmほどの立て札もあった。
 
名前の由来 ムユウジュ Saraca indica
 
ムユウジュ 
無憂樹 
: 憂いのない の意味
インドでの原名 asoka が「憂いのない」という意味で、これを漢訳したのが「無憂樹」であり、和名はその音読みである。
 
インドでは恋する乙女の願いをかなえ、また誕生、結婚にかかわる幸福の木として愛好される という。(日本大百科全書)
 
ムユウジュを植えて、あやかりたいところであるが、東京では温室が必要となる。
種小名 indica : 東インドの という意味
牧野富太郎の植物学名辞典によると、単に「インドの」ではなく、「東印度ノ」とあった。
西インド諸島と間違えないように、わざわざ東を付けたのであろう。
Saraca サラカ、ムユウジュ : 
サラカ類のインドでの俗名 sarac による。
その意味は不明。
ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae :
ジャケツイバラについては 別項を参照していただきたい。
 
エングラーの分類では「マメ科」となる。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        日本大百科全書/小学館、
        Wikipedia
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