シェフレラ・アクティノフィラ
Schefflera actinophylla Harms (1894)

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ドミニカ共和国
科 名 : ウコギ科 Araliaceae
属 名 : フカノキ属 ・ シェフレラ属 
  J. R. Forster & G. Forster (1775)
 
『植物の世界/朝日新聞社』では属名の読み方が「スケッフレラ」となっている
英 名 : Umbrella tree , Octopus tree
原産地 : オーストラリアからニューギニア
用 途 : 観賞用に栽培される。
 


この樹の原産地はオーストラリアで、熱帯地方で観賞用に栽培される という解説がある。
これまで、セネガル・ガイアナ・パキスタン・モザンビーク・シンガポールと、どちらかといえば暑い地域を訪れているが、ドミニカで初めてこの樹を見かけた。
 
垂れ下がる緑の大きな掌状葉、頭にはクリスマスの飾りのような赤い花。とても目を引く大きな木で、現地では20mにもなるという。
 
ドミニカでは住宅の敷地の中や道路に面した場所など、何カ所かで見かけた。
 
小葉のサイズは 25〜30cm

 
木の高さ7m こちらは高さ 約5m

 
幹 と 葉

 
 
葉の表はツヤのある緑色だが、裏は白みがかる。先が丸いのが特徴である。
小葉の数は多いものでは16枚あった。

幹は特に特徴のない、くすんだ色をしている。
枝の先に花序を出す。
斜めに横切っているのは、手前にあった電線。
これを入れないようにすると花が隠れてしまい、しかたなくこの状態で撮った。
 
右下に、新しく出てきた花芽がある。
 
花の拡大写真が、ハワイ大学 ジェラルド・カー教授のホームページにあったのでお借りした。
超アップであるが、絞りを効かせてきれいに撮れている。
 
咲き終わった花

[ Copyright ] Dr. Gerald Carr
 (Univ. of Hawaii )
花が終わると色が黒くなり、「傘の骨」が垂れ下がってくる。
 
実が生っているのかどうかは不明である。
 
名前の由来 Schefflera actinophylla
 
和 名 : な し

 
英語名 Umbrella tree : 
てっきり、ふわりと垂れ下がった葉の形が「傘」なのだと思ったが、海外のあるホームページに、開いた穂状の花が、逆さではあるが「開いた傘の骨」に見えるため、という説が載っていた。
種小名 actinophylla : 放射状葉の という意味
葉の付き方を表している。
写真は葉を下から見上げたものであるが、11枚の小葉が見事に放射状に付いている。
 
大きな葉をなるべく日光に当てるために、 50〜70cmもの葉柄が突き出し、始めは上方に、次第に水平になって、葉が古くなると垂れ下がってくる。
Schefflera : シェフレラ属、フカノキ属
学名 Scheffleraの由来として『園芸植物大事典』には、「19世紀ドイツの植物学者 J. C. Scheffler にちなむ」とあるが、これは間違いだと思う。
 
Index Kewensis によると、属名の命名年は 1775年である。
 
ところが、命名者の二人のフォースター氏の生没年は
  J. R. Forster (1729 - 1798)
  J. G. Forster (1754 - 1794)
であるため、19世紀の人を知るよしもない。
 
ワイオミング大学の Williams温室 を紹介するページに、「Named after J.C. Scheffler (1722-1811), a physician in Danzig.」 とあった。
Danzig は、ポーランドの都市Danzig(現グダニスク)である。
18世紀の医師、Schefflerについてはそれ以上のことはわからなかった。命名者と親交があったのであろう。
二人よりも早く生まれ、長生きしている。
 
ウコギ科 Araliaceae 
ウコギ科については、ハリギリの項を参照してください。
 
 参 考
 
フカノキ
 漢字 不明 : Scheffler octophylla Harms. (1894)
九州南部から沖縄、台湾、中国南部、ベトナムまで分布する。
 
本項で取り上げた actinophylla と同じ仲間の常緑樹であるが、自分自身で目撃したことがなく、また 春日健二氏のホームページ 『日本の植物たち』にもないために、写真はおあずけである。
 
和名の由来や漢字も不明。
 
種小名 octophylla は「八葉の」である。『植物の世界』によると小葉の数は5〜7枚とあるが、写真に写っているものを数えてみると、9枚が多かった。
葉の先は尖っている。
 
ヤドリフカノキ 宿りフカノキ : Scheffler arboricora (1916)
園芸店で「カポック」「ホンコンカポック」の名で売られている観葉植物である。
 
台湾や中国南部が原産であるが、ほかの木に着生する傾向があるために、「arboricora 樹木に生じる」の名が付けられた。
我々が目にする観葉植物としての本種は「着生・宿り木」とはまったく縁がなく、「ヤドリ〜」の名称には違和感がある。和名が使われない一因であろう。
 
「ヤドリ」の名が付けられたのは、日本に導入された時に学名の影響を受けたためと思われる。
 
東京でも屋外で育つ耐寒性がある。小葉の数は、7枚から10枚と様々。

奄美大島では、高さ2m以上の藪のようになったヤドリフカノキを見かけた。
 
東京のヤドリフカノキ
小さな鉢でも元気に育つ。 若い実。撮影は7月初め
 
奄美大島のヤドリフカノキ
撮影は4月初め。
 
東京の植木鉢でさえこの状態なのだから、奄美では、切っても切ってもすぐに大きくなるのであろう。

 
なお、「カポック」はキワタノキ類の名称であるため、本種は「シェフレラ」または「ヤドリフカノキ」とすることが望ましい。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        ハワイ大学 Dr. Gerald Carr のホームページ
               (転載許可取得済み)
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