チークノキ チークの木
Tectona grandis Linn. f. (1781)
科 名 : クマツヅラ科 Verbenaceae
属 名 : チーク属 Tectona Linn. f. (1781)
英 名 : teak
原産地 : インド、ミャンマー、タイ北部、ラオス
用 途 : その材は、マホガニー・ウォルナットとともに3大重要木材である。
家具、内装仕上げをはじめとして、建築、船舶、特にデッキ材などとして使われる。
 
撮影地:
ドミニカ共和国
タイ 、インドネシア
シンガポール
 
建築設計の仕事をしているので、昔からチーク材のことは知っていた。
 
また趣味の日曜大工では、チークの薄板をベニヤの小口に張り付けたりもしていた。
 
しかし、チークノキそのものは知らなかったため、初めてドミニカで実物を見ても、それがチークだとはわからなかった。
 
 
代表的な南洋材だけに、どこの植物園でもチークノキを見ることができる。
またタイのチェンマイ市街から、北の方向にあるシリキット女王植物園に向かう途中では、栽培中?のチークの木をたくさん見かけた。

以下は、各地のチークノキ。
なぜか高さは皆同じぐらいで、10〜15mである。
 
ドミニカ共和国
 
この2枚の写真は別の角度から撮った同じ木で、左は1月、乾期でちょうど実が生っている時。 右は3月、そろそろ乾期も終わりで、落葉が始まっている。
 
素直に育たなかったようで、地面に近いところで枝分かれしている。
そのお陰で、わりと低い位置に枝があって、葉や実の写真を撮ることができた。
 
タイ北部 チェンマイ近郊
 
左 : シリキット女王植物園のものは枝振りが良くて、大きい。
右 : タイ北部は自生地の一部であるが、道端の木は当然植えられたものであろう。
 
シンガポール植物園

 
大きくなると高さ 30〜45mになるそうだが、成長は遅く、建築材として利用が可能になるまでに、60〜80年かかるそうだ。『朝日百科/植物の世界』
 
この木は20m弱であるが、その割に幹の直径は35cmぐらいと細い。
 
背が高くなっても、幹の太さが大きくならないようだ。
チーク材が高価なのは、ひとえに成長の遅さによるものである。
 
葉の様子
葉のサイズは大きなもので、長さ40cm。
 
葉の付き方は「十字対生」なのに、日光を効率よく受けるために捻れて、一見ではそれとわからない。
 
実の様子
花は枝の先端に付く、頂生。
種子は、萼が大きくなってくっついた袋に包まれている。

逆光で半透明の袋の中に、種子ができているのが見える。
 
名前の由来 チーク Tectona grandis
 
チーク 
: 英語名の読み
 
種小名 grandis : 大きな の意味 
植物学名辞典/牧野富太郎 によると、「偉大な」となっているが、ラテン語辞書では「大きな」という意味が第一義である。
 
続けて、2. 十分に成長した 3. 偉大な、堂々とした 4. 崇高な
となっている。
 
 
命名者である Linn. f. の「f. 」は、「filius むすこ」の略で、リンネが37歳の頃に生まれた子供である。
 
小リンネと呼ばれて父と同じく植物学を専攻したが、42歳で早世している。
Wikipedia より
 
さて、小リンネは「大きな、偉大な」という種小名を付けるに当たって、何を大きさの基準にしたのだろうか?
 
自分ではチークノキが生えている現場には行っていないかもしれないが、標本、スケッチあるいは採取者の話しから、巨大な木であることはわかっていたであろう。

大きさとは相対的なものであって、普通は、同じ属にいくつかの種があり、そのなかでチークノキが飛び抜けて大きければ、grandis にもすんなりと納得がいく。
 
葉が大きい時は grandifolius、花が大きい時は grandiflorus となる。
 
 
現在では、チーク属には次の3種が知られている。
 
 ・チーク Tactona grandis Linn. f. (1781)
 ・ハミルトンチーク(仮称) T. hamiltonia Wall. (1832)
 ・フィリピンチーク(仮称) T. philippinensis Benth. & Fook. f.
(1876)
 
熱帯の樹木には何十メートルにも成長するものがいくらでもある。
ほかの2種の命名は 50年、90年後でありチークの名前を決める時には、同じ属には比較対象がなかったはずである。
 
しかし結果的には、ハミルトンチークの高さは4m程度、フィリピンチークも低木ということで、「チークが grandis 」で正解だった。

小リンネが命名する時に、すでに3種ともヨーロッパで知られており、他の2種の「命名」だけが 50年、90年遅れた、ということは考えにくい。
 
Tectona チーク属 : 
属名 テクトナは、印度南西部マラバル地方、現在のケーララ州でのMalayalam語の名称 tekka あるいは thekku に由来する。
 
その後、ポルトガル語で teca となったようで、それが tectona になるには、途中にもっと変化があったのではないだろうか。
 
いずれにせよ、意味は不明である。
クマツヅラ科 Verbenaceae
この項 ペトレア(ヤモメカズラ) の記述と重複。
 
 
クマツヅラ科には園芸的に利用されている、ランタナ、ドゥランタ、バーベナ、ムラサキシキブ、また南洋材で有名なチークが含まれる。今では、クマツヅラというよりもバーベナと言った方が、通りがよいかも知れない。
世界中に約 100属、約 2,600種があるという。
 
学名 Verbena の由来はクマツヅラ属のある種に対する、古いラテン名ということであるが、詳細は不明。『園芸植物大事典』
 
クマツヅラの名の由来についてはこちらを参照してください。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        Wikipedia、
        Merriam-Webster OnLine
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