コダチヤハズカズラ 木立ち矢筈蔓
Thunbergia erecta T.Anderson (1863)
← Meyenia erecta Benth. (1849)
科 名 : キツネノマゴ科 Acanthaceae
属 名 : ヤハズカズラ属
Thunbergia Retz (1776)
原産地 : 熱帯西アフリカ、熱帯西中央アフリカ
用 途 : 熱帯や亜熱帯地方で、庭木(植え込み)として植えられる。
日本では沖縄では路地でOK。
関東では温室で見かける。
撮影地: シンガポール 、日本 沖縄

ヤハズカズラ属にはその名の通り つる性のものが多いが、本種は低木である。
シンガポール植物園と沖縄で見たものをあわせて掲載する。

全体像 高さ90cm
シンガポール植物園のタングリン・ゲイトをはいってすぐのボタニー・センター横、西側の植え込みに植えられている。 
少し赤みががった紫と 薄紫色の花が咲いていた。

うす紫色の花
サイズは 3〜4 cm。  花弁の縁か一部 白くなっている。
 
濃い方の花
葉は先の尖った楕円形で、この木には一部の葉に 少しだけ鋸歯(葉のギザギサ)がある。
 
沖縄で見たコダチヤハズカズラ
この木の葉は 波打っている。 名札は「コダチヤハズカズラ」となっていたが、同属の vogeliana (フォーゲリアナ)の可能性がある。

名古屋 東山植物園 温室で
この木の葉には 粗い鋸歯がある。

名前の由来 コダチヤハズカズラ Thunbergia erecta

和名 コダチヤハズカズラ 木立ち矢筈蔓:
つる性ではなく 木の形となるヤハズカズラの意味。 木立と言っても 本種は灌木である。
 
種小名 erecta : 直立の の意味
和名と同じで、ツルではなく木本の種という意味であろう。
 
ヤハズカズラ属 :
ヤハズカズラ属は熱帯・亜熱帯の植物で、初めて日本に伝えられたのがヤハズカズラ : Thunbergia alata のようだ。
『園芸植物大事典』によると 1879年(明治12年)のことである。

alata は「翼のある」という意味で、長い葉柄(葉の柄)に 翼(膜状に張り出したもの)があることに由来する。 写真には写っていない。
ヤハズカズラ
Wikipedia より
ヤハズの由来は、花を包む2枚の「」を 「矢筈」に見立てた命名である。 ヤハズカズラの写真は前掲の1枚だけなので、「コダチヤハズカズラ」で代用する。
コダチヤハズカズラ 矢筈
矢筈は「矢を 弓につがえる部分」で、簡素なものは矢そのものに溝を付ける。 別途 竹・木・角・金属・水晶などで部品を作り、矢に取り付ける「継筈 つぎはず」もある。 右の写真は国立博物館に展示してあったものだが、矢筈は金属製のようだ。
 
キツネノマゴ科 Acanthaceae :
キツネノマゴ科の「基準属」は ハアザミ属 Acanthus であるが、科の和名はキツネ...。 なぜだろうか...。

アカンツス属の植物は地中海沿岸、熱帯アジア、熱帯アフリカなどの原産で「ハアザミ」と言われても馴染みがない。このため、代わりに数少ない国産の本科のひとつ、キツネノマゴを科名としたものと思われる。

キツネノマゴについては、「ベニサンゴ」の項の記述を参考にしていただきたい。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        植物用語事典/清水建美、
        Wikipedia
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