アメリカネム アメリカ合歓
Albizzia saman F.Muell. (18 ? )
←Samanea saman Merrill (1916)
←Mimosa saman Jacq. (1866)
← Pithecolobium saman Benth. (1844)
 

 
別 名 : アメフリノキ 雨降りの木
科 名 : ネムノキ科 Mimosaceae
(マメ科 Leguminosae
属 名 : ネムノキ属
  Albizzia Durazz. (1772)
英 名 : monkeypod , rain tree , saman
中国名: 雨樹
原産地 : 西インド諸島、メキシコからペルー、ボリビア、ブラジルなど熱帯アメリカに分布
用 途 : 熱帯地方各地で日陰樹として使われ、街路樹や公園樹として植えられている。
 
 
撮影地
セネガル 、ドミニカ
インドネシア
 
インドネシア ボゴール宮殿
下で作業している人の なんと小さいこと!
あまりにすばらしく、感嘆のあまり 声も出ない。
樹齢はどのくらいなのだろうか?
 
 
雨が降ると葉を閉じるために 雨降りの木、rain tree、雨樹、と呼ばれているが、現地に滞在中はそのことを知らず、本当に閉じたかどうか未確認である。
 
夜に 葉を閉じているのは見たことがある。薄暗くなると葉を閉じるのであれば、理屈に合う。
 
まさにネムノキ 閉じかけた葉
葉の大きさや形が違うが、花の咲いている様子はネムノキによく似ている。
 
ネムノキと同じ2回複葉であるが 大きな葉の表面に光沢があり、少しだけ厚みもある。
 
幹の様子 白花アメリカネム?
太くなると割れ肌となる。 葉の形がよく似た白花のネム
別種 Albizzia lebbeck Benth. である。
 
街路樹として
市街地南部、軍病院近くの高級住宅地
 
傘型の樹形
ドミニカ・サントドミンゴ植物園 高さ10m以上の大きな木。
ドミニカ共和国は原産地の範囲に含まれる。
 
実が生った状態 落ち葉と若い実
セネガルでの乾期の始まりである2月の初めに撮ったもので、実はまだ若く、これからもう少し太くなるものと思われる。
右の写真は実を取って、地面に置いて撮影したもの。
 
鈴なりの実 熟した実は焦げ茶色


青い果実よりも幅が大きくなっている。実の周囲には白い縁取りがある。
これは 成熟してサヤの皮の中央部分が縮み、周囲の部分とに「隙間」ができたためである。
 
熟した状態でも中には透明な水飴状態の甘い粘液が入っていた。
 

 
ドミニカ共和国で 3月に撮影。
 

 
名前の由来 アメリカネム Albizia saman
 
アメリカネム
 :
 アメリカ産のネムノキ。
アメリカといっても U.S.A.ではなく「熱帯アメリカ」を指す。
 
『園芸植物大事典』では本種を Samanea属としているが、「最近の研究ではネムノキ属に含められることが多い」とある。
いろいろなホームページでもほとんどが「サマネア サマン」となっているが、『朝日百科/植物の世界』ではネムノキ属 Albizia となっている。
Index Kewensis ではPithecolobium属となっていた。
 
このように、研究者(学者)の見解によって学名の記載が異なることがある。本種ではそれが、学名の変遷にも現れている。
 
某電機メーカーのテレビコマーシャル「この木何の木」に使われている木である。
 
ドミニカやインドネシアの樹形とは異なるので、なにか人工的な(形作ったような)気がしないでもない。
 

 
それはともかくとして、ハワイオアフ島のモアナルア公園にあるものだそうだが、勝手に?自社の名前を付けてしまっていいものかどうか....。
 
Albizia または Albizzia ネムノキ属 :
18世紀のイタリアの自然科学者アルビッツィ (F. D. Albizzi )を記念して付けられたもの。
本来はアルビッツィのスペルから Albizzia とすべきであったが、命名者の Antonio Durazzini (18世紀)が Albizia と記載したため、誤った名前のままこれが正式の属名となってしまった。
 
アメリカネムの現在の学名 Albizia saman の命名者は19世紀ドイツ生まれの植物学者ミューラー(1825-1896) 。大学を卒業後にオーストラリアに移住して活躍した。命名の年は不明である。
種小名 saman :
この木の南アメリカの俗名である saman が名付けられたという説と、スペイン名 zaman に由来するという説が載っているが、いずれにせよその意味は不明。
 
初めて saman の名を付けたのは、1800年生まれ、イギリスの有名な植物学者、ジョージ・ベンサムである。
英 名 モンキーポッド
pod は豆などの鞘のことで、本種の実は多肉質でデンプンと糖分を含むため、猿が好んで食べるところから名付けられた。
家畜も好むということである。
 
アメリカネム ←
 
 ネムノキ
(合歓の木) : Albizia julibrissin Durazz. (1772)
夜に葉が閉じるところから付けられた「ネムリノキ」(眠りの木)が短くなったもの。
夜だけではなく、春の新芽が出てくるのも極めて遅い。周囲がすっかり新緑となってから、ようやく芽が出て来るネボスケの木である。
 
マメ科(クロンキストの分類では ネムノキ科)の落葉高木で、日本では本州以南、アジアではイランから南アジアに分布する。
silk treeの名にふさわしい花 ネムノキの実
ほのかな香りがして大好きな花のひとつであるが、咲き終わってしおれた花が残り、汚くなるのが難点。
 
鉢植えのネムノキ 葉が閉じた状態
漢字の「合歓」は中国名そのままで、それに和名の「ネム」の読みをあてている。
右の写真のように夜、葉がぴったりと合わさる特徴から、中国では夫婦和合の象徴となり「合歓」という色っぽい名前が付けられた。
 
これを日本語で音読みすると「ゴウカン」となり、「強姦」を連想してしまうのは別としても、夫婦が同衾するという意味が、ネムノキの花のイメージと合わないこと、甚だしい。
 
近縁種の Leucaena leucocephala の場合は、「ギンゴウカン」が標準和名のようで、「ギンネム」が別名 となっている。『園芸植物大事典』
 
合歓の名前は古くから伝わっていたらしく、万葉集にも詠まれている。
芭蕉の「象潟や 雨に西施が ねぶの花」の句は雨にけむる様子で茫洋とした感じが出ているが、掛ことばのはいった句の意味は解説を聞かないとわかりにくい..。
  種小名 julibrissin
植物学名辞典/牧野富太郎を見ると、単に「東インド名」となっている。ネムノキの東インドでの呼び名 という意味であろうか。
 
 トピックス
 
この木なんの木
 
観光客が写真を撮って、自分のホームページに「私の木」として載せる程度なら構わないが、いくら公開されている公園とはいえ、木に自社の名前を付けて、テレビのCMに使っていることには少々違和感があった。
 
2007年2月10日の新聞に「撮影権を取得」という記事が載っていた。
「やはり...」という感じである。日経新聞の内容をそのまま引用する。
 
『日立製作所は9日、「この木なんの木」の同社CMで知られる大樹=写真がある米ハワイ州の公園内の映像を独占的に使用できる権利を取得したことを明らかにした。公園の維持や管理費を含む使用料は年間 5,000万円程度とみられる。
独占的撮影権を取得したのは、オアフ島のホノルル国際空港北部にある モアナルア・ガーデンパーク。1984年から始めたCMで知られる大樹「モンキーポッド」がある。現在のモンキーポッドは樹齢約130年で、高さは約25メートル、幹の周囲は約7メートル。
公園を所有する管理会社カイマナベンチャーズと契約した。』
 
なんと、5,000万円!!
 
「独占的撮影権」となると、観光客も、撮影するには日立の許可がいることに...  はならないだろう。
 
看板ぐらいは立つかもしれない。
 
日立が使っているこの写真は現在の姿とは違うのかもしれないが、高さ25mの比率で樹冠の幅を計算すると、77mとなった!
 
やはり一度は現物を見ておかねばならない。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        羅和辞典/研究社、
        日経新聞 2007年2月10日
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ