山手線 が 渡る橋 ・ くぐる橋
新橋 → 浜松町

番外. 浜松町架道橋の工事手順
 2024.12.5 掲載
タイトルが水色の写真は、10年以上前の
撮影(過去の様子)であることを示す。


工事が始まったのは1990代の終わりの1998年頃で、2004(平成16)年に二度目の架け替えが竣工したが、最終的な完成形となるのはまだ先。国鉄・JRの超長期計画のひとつである。
昔 工事囲いに貼られていた「工事概要」と、土木学会誌に掲載された「長大間合いでの浜松町架道橋架替工事」/(工藤および田淵)を参考にしながら、工事手順を考えてみた。
灰色地の記述は推定事項で、間違っている可能性がある。


第4線〜第1線      2010.1.3.

A4


A3・
 A2
A1
南方向を見ている。すべての架道橋が 2005年には新しくなった。架道橋を新しくする場合、無理をしてでも橋脚を立てないようにするのが普通だが、舗道上にあるコンクリート製の頑丈な橋脚は工事工程上で不可欠のもので、完了後も残る。
この後2022年に、第2ホームを広げるために、第4線は左に移設された。
それまでに20年近くも掛かったのは、貿易センター地区の再開発の進捗が遅かったためだろう。ようやく 2013年になって都市計画決定の告示を受けた。

以下の記述は「浜松町架道橋」と重複する部分がある。



@ 準備工事:仮線への切り替え

二度目の架け替え工事に先立って、驚くべきことに、
作業スペースを作るために新幹線と東海道線の軌道を付け替えて、一時期「仮線」を通した。
その範囲はおよそ 写真Bの ▼▼ の範囲。
写真A:仮線移行前 1992年

1992年12月31日 / CKT921-C10-36 / 国土地理院
1992年末の着工前の状態。国土地理院に掲載されている次の空中写真 1997年6月時点でも、まだ工事は始まっていないが、解像度が悪くて掲載できない。
写真B:仮線移行後 2001(平成13)年12月

2001年12月31日 / CKT20015X-C6-12 / 国土地理院
新幹線・東海道線4線分を東側(写真では上側)に移動し、あいだに大きなスペースをつくった。作業スペースを設けるために、仮線の長さを大きく取っている▼▼
写真B-2:部分拡大

2001年12月31日 / CKT20015X-C6-12 / 国土地理院
解像度が悪いので、スケールを小さくしてなんとか。の位置は写真Aと同じ。架道橋の南側の東海道線線路はそのまま残してあるが、北側は撤去して作業スペースを作った。
既存の電車線の桁と較べると新幹線・東海道線の仮桁が長くなっているのは、ガード下を作業に使うためだろう。


架け替え手順を簡単に述べると、
@ 旧貨物線部分に新幹線・東海道線 4線分の仮設軌道を敷く
  仮桁を架け、切り替えを行ったのちに、既存の桁を撤去
A 新設橋脚・橋台を設ける
B 電車線(A部)4線の架け替えを行う。
C 東海道本線(T)部に本設桁を架け、線路を切り替える
D 仮設東海道の桁を撤去
E 新幹線(TS)部に本設桁を架け、線路を切り替える
F 仮設新幹線の桁を撤去し、築堤の北側は撤去

工事前の電車線(A部・T部)の状況

掲示されていた図を元に作成。以下同様
1937(昭和12)年に架けられた浜松町架道橋

工事現場に掲示されていたもの。撮影は1941年。出典不明。
この架道橋は60年以上使われたが、有楽町では100年以上の桁があるので 長いとは言えない。架け替えの理由は駅舎の大改築に伴うもので、架け替え後も車道幅は変わらない。


A 橋脚・橋台(HEP橋台) の新設

まずは 将来新しい桁を受けるための橋脚で既存の桁を受け替え、新橋側には鋼製箱形の橋台が造られた。
 駅側のRC橋脚:
本架道橋の特殊な要因によるもの。駅側の歩道も広げる計画だが、「北口」が別の場所に移転するまでは 改札口となっている「浜松町高架橋」を橋台として使う必要がある。そのため本設主桁と仮設の側径間桁を受けるための、頑丈な橋脚が造られた。
新設橋脚       2010.8.27.
奥が海側。車道上の長い本設桁(右側)をコンクリートの橋脚で受け、右側の既存橋台との間に「仮設」の短い桁を架けてある。
仮設といっても、もう20年も使っているが、数年後には右側の改札口が建て直され、側径間は10mとなって歩道が広くなる。

北側の HEP橋台:
資材搬入口・作業スペースとして利用し、最後は北側の橋台とするために、通常の擁壁型の橋台ではなく特殊なHEP橋台が設けられた。
HEP工法で造られた線路下の開口

掲示されていた写真を元に作成。海側から見ている。
HEP とは High-speed Element Pull 工法の略称。
現地の説明書きには「四角い綱函をつなぎ合わせながら、軌道直下に圧入し、四角いトンネル状の構造物が完成」とあったので、このサイズをいっぺんに「圧入」するのかとビックリしたが、そうではなかった。
1m 角程度の「エレメント」(上図の赤い四角) で構成される。
エレメント同士を縦横に接続しながら、順次1本ずつ掘削する。
     この工事の場合は 上下各10個、左右各4個。




反対側の擁壁の反力を利用して、PC綱線でエレメントを引っ張って推進。
先頭部には小さな「掘削機」を付け、土砂は吸引して排出する。
掘削が進むごとにユニットを継ぎ足し、長く細長い構造物を造る。
各エレメントには コンクリートを詰める。
四周が完成したら内部を掘削する。
この工法のメリットは、表層直下でも施工が可能、仮設資材などが不要なこと。
HEP橋台の位置
山手線の内側から海方向を見ている。架道橋の北側(写真左半分)の、コンクリート壁の中に HEP橋台がある。
配水設備
竣工年月
鋼板水平部に遮られて雨水が浸透しないため、多数のドレーンで雨樋に排水している。


B 電車線の桁の架け替え
架け替え方法は、
 a. 作業スペースで3分割の桁を地組みし、ひとつに組上げる
 b. 旧桁を撤去
 c. 架け替える線路上に横移動 (横取り)、(b. c. は並行作業)
 d. 新桁を道路上に移動 (縦取り)、(d. c. も一部同時)
 e. 据え付け
 f. 軌道の接続
で、b.〜 f. を1日強で行う。
第4線、第2・3線、第1線の順に行われたと思われる。

架橋の手順 a.地組み
注) 掲示されていた完成時の写真を元にして、第4線の架橋模式図を
作成したため、実際の工事とは桁の状態が異なる。
a. 地組作業 (第1線用)

掲示されていた写真を元に作成
第1線(京浜東北線北行)の桁を組立中。クレーンで吊り上げた床版を設置するところ。奥の台上に組み上がった 3分の1の桁がある。
b. 横取り と c. 既存桁の撤去
あらかじめ既存線路の両側に設置しておいた「横取り軌条」にモーターの付いた自走台車を載せ、その上に新しい桁を積む。
手順 d. 縦取り
自走台車で道路上に桁を出し、「ユニットキャリア」(タイヤの向きを変えて縦横自在に動ける特殊車両)に載せる。
第1線の縦取り作業中

掲示されていた写真を元に作成
新橋方向を見ている。ユニットキャリアで桁を最終位置まで引っ張り出し、大型ジャッキの「リフトベント」を使って下降・据え付けを行う。
これまでに、右側に見える ほかの3線は架け替え済み。
実際の第1線(京浜東北線北行き)架け替えの時には、
 ・事前に 第2線上に横取り・仮置き(時期とタイミングは不明)
 ・第1線の停止:
    終電後 午前1時から 午後2時半までの 13時間半
    始発からは 第3・4線を使って? 電車を運行
 ・道路の通行止め:午前1時から 朝9時までの8時間


掲示されていた写真を元に作成
将来は、駅側の歩道幅が倍増する(右の赤の線)。


C〜E 東海道本線・新幹線 の移設
電車線は4線あるので、工事中も2線で山手線と京浜東北線を共用して運行ができるが、東海道線や新幹線はそれができないため、本設桁を地組・縦取りして架けた後、線路を切り替えて元に戻した。
東海道本線 復旧後

掲示されていた写真を元に作成
新幹線はまだ仮線で、3主桁の仮設桁の状態。この後、新幹線用の橋台を設けて2主桁の本設桁を架け、線路を敷き直して元の位置に戻した。
2005年で工事は一段落    2011.8.27.
かつての世界貿易センタービルから。
架け替え工事が一段落したあと、しばらくして本格的な駅舎改良工事が始まり、2022年にA4の桁が東側に移動されたが、A1〜A3はまだ最終形とはなっていない。
新幹線用の橋台      2024.2.8.
東海道線の橋台(右側)とは 縁が切れている。新幹線は重量があるためか、梁のサイズが大きい。


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