エドヒガン 江戸彼岸
Prunus itosakura Siebold (1830)
以前掲載していた学名は「大間違い」でした。お詫びして 訂正します。

筑波植物園
科 名 : バラ科 Rosaceae
属 名 : サクラ属 Prunus
別 名 : アズマヒガン、ウバヒガン
英語名 : Higan cherry , rosebud cherry
原産地 : 本州、四国、九州。 済州島
用 途 : 庭木、建築材、器具材
備 考 : 寿命が長く、天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。 
エドヒガンの枝垂れるものが「シダレザクラ」とされている。

サクラの学名は 各所、各人でまったく違う。
本ホームページでは、米国農務省のデータベース
『GRIN / Germplasm Resources Infor. Network』の学名で統一しているが、2018年にシダレザクラ関連種について変更があり、エドヒガン、ジュウガツザクラなどが遺伝子的には シダレザクラ P. itosakura と同じとなった。


@:樹 形    2013.3.22.
一般に15〜20m、時に 30mまで大きくなる木ではあるが、この木の場合は周りに木が多いために、特殊な樹形となっている。現在は、右に伸びる大枝が折れてしまった。
樹高 約13 mのうち 11mまでは葉が無い。日当たりが悪いために枝が落ちてしまったものだ。小石川には エドヒガン は複数本あるが、上部にしか花を付けないため、詳細は 園外で撮った写真となる。

@:幹の様子
幹の太さは根元の長径で 75cm。高さ 1.55 mの所で枝分かれしていた。
2022.10.3         大枝が折れて 切断       2022.10.23
大枝の基部付近に割れが生じていたようだ。

A:奥のエドヒガン  2014.4.4.
  エドヒガン↑        ↑シダレ桜
シダレザクラの右側に2株あった。これも ひょろ長い樹形で、花は はるか かなた。
2018年9月の台風の南西風を受けて、シダレザクラは奥方向に、エドヒガンは左方向に倒れてしまった。

倒れて4年経った幹    2022.12.11.
並んで生えていたシュロの大木に倒れ掛かった。ここだけ「原生林」のような雰囲気だ。



      筑波植物園のエドヒガン    2012.4.6.
高さ7m。これが自然な樹形だと思われる。

筑波の幹
当時、根元付近で 30cmだった。 

京都植物園はピンクのつぼみ    2000.5.2.
木によって 花には 紅色から白色まで、変異があるそうだ。

小石川のつぼみは 極淡いピンク  2011.4.7.

筑波植物園の白い花     2012.4.6.
花の直径は 約 2cm。
花の特徴
チェックポイントは、ぷっくり脹れた花托筒。細かな毛が密生している。

葉         2000.5.6.
葉は細長く、その分「測脈」の数も多い。  目黒 自然教育園

エドヒガンの実      2012.6.2.
筑波植物園。熟すともっと黒くなる。

 
エドヒガン の 位置
写真@: C6 d 標識35番 震災記念碑の先。 20通りと30番通りの間
写真A: B4 a 標識26番の先 右側。台風被害で倒れてしまった


名前の由来 エドヒガン Prunus
 エドヒガン:彼岸の時期に咲くことから
別名「アズマヒガン」また 。以前の変種名・品種名 ascendens から、「タチヒガン」とも呼ばれていた。
単に「ヒガンザクラ」とも呼ばれたが、「コヒガンザクラ P. subhirtela」も ヒガンザクラと呼ばれて紛らわしいために、牧野富太郎が 1908年に『植物学雑誌』で「エドヒガン」と命名した。
朝日百科『植物の世界』によれば、「このサクラが東京周辺で多く栽培されていたことと、他のサクラより開花が早く、彼岸のころには淡紅色の花が咲くことから」となっている。

シダレザクラ :
エドヒガンが枝垂れたものが 特に尊ばれ、「糸枝垂れ・枝垂れ桜」として 寺院・屋敷に植栽された。
野生種には本来枝垂れる性質はないのだが、植物の中でジベレリンが作れなくなると、上に伸びずに枝垂れてしまう。自然の中で そのような突然変異が起きたものを、接ぎ木などで人工的に増やしたものが「栽培品種」である。
       (園芸品種と同義で使われる事もある)
 種小名 subhirtella:やや短い剛毛のある 
sub- は ほとんど、やや、弱い。hirtellus が 短い剛毛が有る という意味で、葉柄・花柄・花筒・花柱下部などに短い毛があることから。
  花の内部       2012.4.18.
結実せずに落ちた花を裂いて見たところ。木の上で種子はできているのだろうか?

 Prunus サクラ属:スモモ から
ラテン語のスモモ prunum(『植物学名辞典/牧野』によると proumne)に由来する。リンネ以前に、トゥルヌフォール(1656-1708)が命名していた。
「サクラ」の由来は、別項 サクラ・コレクション を参照の事。



エドヒガン と シダレザクラは「親類関係」であり、だからこそ 植物園では 2か所とも 両者が隣り合わせに植えられていたが、今は1か所となってしまった。

左 : シダレザクラ        右 : エドヒガン@

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ