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科 名: | ヤマグルマ科 Trochodendraceae | |||
属 名 : | ヤマグルマ属 Trochodendron | |||
別 名: | トリモチノキ | |||
英語名 : | wheel tree | |||
原産地 : | 本州、四国、九州、南西諸島 朝鮮半島南部、台湾、中国南部 |
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用 途 : | 樹皮からトリモチが取れる。材は器具材として用いる。 |
下から見上げた観察枝 2015.2.12. |
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ヤマグルマは、なるべく葉が重ならないように 伸ばす枝の長さなどを工夫している。葉は 早落性の低出葉を除けば、茎頂附近にまとまって偽輪生に付く。 ヤマグルマ の本文は、こちらを参照。 事典に書かれている「花序は茎頂に付く」を大前提として、枝の伸び方のパターンをまとめた。観察地は 小石川植物園 と 筑波植物園。 まず、冬芽から花序と3本の側枝が伸びる 典型的なパターンの模式図を示す。 |
水平枝 と 垂直枝 | |
枝を構成する形態は 二つに分けられる。 | |
① ③ はほぼ水平に伸びるので、水平枝・Hタイプ と名付け、② はほぼ垂直に伸びるので 垂直枝・Vタイプと呼ぶ。 ( H : horizontal、V : vertical ) 複数の枝が伸びる場合は 完全な同時枝である。 |
筑波植物園 2015.2.7 |
水平枝 : |
成長に伴って、受光を確保しながら葉の量を増やすために、水平方向に伸びる枝。湾曲して上を向こうとするが、枝全体が垂れ下がることもあって、葉が垂直になりがちである。 |
垂直枝 : |
水平枝が枝の端部に葉を付けるのに対し、垂直枝は枝の内部に葉を付ける役目を果たす。枝の伸びを抑え、毎年なるべく同じ位置に葉を出す。 |
分枝のタイプ分け | |
次に 分枝の状態を、花序が付く場合と付かない場合に分け、伸び出す「側枝」の数で、以下のように分類する。 | |
NF: Non Flowering、F: Flowering 花を持つ |
花序の有無 | - 側枝数 | 備 考 |
花序無し | ||
NF | - 0 | 頂芽がそのまま伸び、側枝無し 水平枝 H、垂直枝 V ともに頻繁に現れる |
NF | - 1 | 水平枝では時々、垂直枝ではまれ |
NF | - 2 | 水平枝だけで確認 |
NF | - 3 | 同 上 |
( NF | - 5 ) | 徒長枝などの特殊な例 |
花序あり | F-0 は無い(必ず側枝が出る) | |
F | - 1 | 水平枝 H、垂直枝 V ともに現れる |
F | - 2 | 同 上 |
F | - 3 | 水平枝のみに現れる |
F | - 4 | 同 上 |
小石川植物園と筑波植物園で観察した結果、考えられるすべてのタイプが観察された。以下に タイプごとの具体例を挙げる。 |
1. 花序無し NF | : 頂芽がそのまま伸びる |
■ | NF-0 | :頂芽がそのまま1本だけ伸び、側枝無し |
水平枝 | 垂直枝 |
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考察: | ||
水平枝: | 水平枝が初年度に長く伸びた場合、2年目は頂芽が短く伸び、その後3年目に分枝することが多い。このため 多くの水平枝には、途中にひとつの芽鱗痕がある。 まれに 2年目に分枝したり、上の写真のように5年間も分枝しないこともある。 |
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垂直枝: | 水平枝から出る初年の枝は少し斜めで 数センチの伸びがあるが、年を経るにつれて上を向き、垂直になっていく。二年目以降は伸びを1センチ以下に押さえ、なるべく同じ位置に葉を展開する。このため 多くの芽鱗痕が連なる。 垂直枝は枝分かれは少なく、ほとんどがこのタイプである。 |
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■ | NF-1 | :頂芽 と 側枝が1本だけ出る |
水平枝 | 垂直枝 |
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垂直枝では 極めてまれである。 |
■ | NF-2 | :頂芽と 側枝が2本出る、計3本 |
水平枝 | 垂直枝 |
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垂直枝が 3本に分かれる ことはない |
考察: | |
水平枝: | 2本の側枝が下側に出た場合は、翌年以降に 頂芽が垂直枝になることもあるようだ。側枝の付け根には低出葉の落ち跡があるはずなので、若い枝なら判別できる。 |
■ | NF-5 | :頂芽と 側枝が5本出る |
垂直枝の特殊例 | |
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考察: | |
中央の頂芽の周りに5本の側枝が出た 希なケース。 勢いよく上部に伸び出した枝の周囲が空いていたために、花を付けるよりも枝を伸ばすことを優先したもの。 筑波植物園。 |
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2. 花序あり F | : 必ず1本以上の側枝が出る |
■ | F-1 | :花序と 側枝1本 |
水平枝 | 垂直枝 |
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側枝が伸びる位置は不定だが、真上になることは少ないようだ。側枝が代わりに主軸となるので、屈曲する。 |
水平枝 | 垂直枝 |
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落葉痕(▼)と 花序の落ち跡 (▼) は、サイズに差が無いために見分けにくい。しかし 葉には維管束の跡が3つあり、一方 花序の跡は ◎型という違いがある。 垂直枝では数年間花序を付けず ( NF-0 )、水平枝よりも開花の頻度は低い。 |
■ | F-2 | :花序と 側枝 ▼2本 |
水平枝 | 垂直枝 |
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考察: | |
水平枝: | 2本出た側枝の位置関係によって、その後の伸び方が異なる。通常は上側が垂直枝となり、下側が水平枝となる(前掲写真)。2本が対等の位置に出た場合には、まれに2本とも水平枝となることがある(次の写真)。 |
2本ともが水平枝 | 分岐部の上面 | 同 下面 |
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分岐部分のアップ。下面は日焼けしていないために まだ青く、上下の違いが著しい。本来 135度であるはずの 2本の側枝の角度が、ここまで小さい理由は未解明。この部分で5年が経過しているので、伸長時に軸方向から見た「135度の開度」が、同等の主軸として成長した現状とは変化しているためだと思われる。 | ||
垂直枝: | 5~9年経つと主軸との間にスペースができ、2分枝することがある。そこまでの長さは 6~10 センチ。 分枝時には おおむね花序を付ける。 |
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■ | F-3 | :花序と 側枝 ▼3本 |
水平枝 | 垂直枝 |
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なし |
一般的なケース | 特殊ケース |
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考察: | |
水平枝: のみ |
最も一般的な分枝のタイプで、下側の2本が水平枝になることが多い。まれに 2本が丁度上側に出て、下側の1本だけが主軸となることもある。 側枝のなす角度 ①-② と ②-③ は135度、③-① は 90度だったはずだが、その後の成長に伴って狂ってきている(写真 左)。 |
■ | F-4 | :花序と 側枝 ▼4本 |
水平枝 |
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考察: | ||
水平枝: | もし写真の太い軸が頂芽とすると、片側に3本の側芽が出ていることになって原則に合わないため、花序があったと判断した。中央斜め上に出ているのが垂直枝。芽鱗痕が多いので それとわかる。 もう一つの可能性は、垂直枝が頂芽で その周りに3本の側枝が出て、地面に近い一本だけが主軸として太くなった(NF-3タイプ)という見かたもできる。 |
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枝を一見しただけでは判らないが、このように様々な伸び方を交えながら、結果的に、遠目には平面的な団扇型を形作る。 |
2011.5.12. |
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下から見上げた観察枝 2015.2.12. |
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葉の付き方 と サイズ へ続く |
ヤマグルマ の 位 置 |
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B5 a | ● | 柵で囲われたサネブトナツメの裏側 |
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