ゴバンノアシ 碁盤の脚
Barringtonia asiatica Kurz ( 1875 )
← Mammea asiatica Linn. ( 1753 )
科 名 : サガリバナ科 Lecythidaceae
属 名 : サガリバナ属 Barringtonia
J. R. Forster & G. Forster (1775)
中国名 : 棋脚樹
原産地 : マダガスカルから、太平洋諸島まで
用 途 : 防風・砂防のために植えられる。材は家具や建築材に使われる『園芸植物大事典』
撮影地 : ジャマイカ

ついに見ました、ゴバンノアシ!

プラントハンターも 「プラントウォッチャー」も、足で稼がないと新しい植物に巡り会えない。
ガイドブックのない新しい植物園を訪ねた時には、とにかく隅から隅まで歩いて見て廻らないことには、もし珍しい木があったとしても見逃してしまうことになる。

キングストンのホープ植物園に行ったのは日曜だったので、職員はおらず、頼りの名札もほとんどない。

ふと見上げた木に「ゴバンノアシ」がぶら下がっていた。

高さ 約15m 幹の様子


先に図鑑で注目していた植物に、首尾よく巡り会えたのは初めてだった。


枝の太さの割に葉が大きく、葉が枝の先端にしかないために、あまり大きな木には見えないが、高さは15m程あった。
根元の太さは30cm程度。

花 白い花びらが見える 落下した雄しべ
2008年4月中旬。花はほとんど終わっていて、一つしか咲いていなかった。右の写真は落ちていた雄しべのかたまり 長さ7cm である。 

ぶら下がる実
花が上向きなので、サガリバナ科ということを忘れていた。

雌しべと顎は最後まで残っている。

果実は四角錐で稜の肩が丸くなっているところが、碁盤の脚のイメージを強くしている。

花びらの数も4枚のようだ。
熟して落ちた実
実の大きさは、大きいもので幅10cm。

大きな種子
手頃な石で ふかふかの実を割ってみると、中には直径4cmの大きな種子がひとつ。 丸い種子の中は、真っ白いデンプンかなにかの塊であった。

果実はスポンジ状になっていて、水に浮いて種子を広めるという。

名前の由来 ゴバンノアシ Barringtonia asiatica

ゴバンノアシ
本物の「碁盤の脚」と較べてしまうと違いがあるが、イメージはピッタリ!
碁盤の脚


脚は8面体 クチナシの実
碁盤の脚の面取りの数は8面で、この脚が「クチナシ」をかたどっているという説があるが、クチナシは6面体である。

クチナシ説は「他人の対局には口を出さない」という語呂合わせのようだが、これはシロウト碁の対局中の話である。
碁盤に向かい合って対局している棋士は、必死になって相手の手を読んでいるわけで、終わった後も互いの手を批評し合ったりしている。 対局をハタで見ている人たちも、今の一手を、ああだ こうだと解説したりする。

また通常使われる「死人に くち無し」は、聞きたくても もう聞けない、あるいは 言わせたくないために殺す ということで、「口を出さない」ということではない。

囲碁の原型は中国から伝わったものである。
この碁盤のデザインが、いつ頃・どこで固まったかの調べがついていないため、脚が何をかたどっているのか、形の由来もわかっていない。
二条城の擬宝珠
「擬宝珠 ギボシ」を面取りしたもの とも考えられる。
Wikipedia より

種小名 asiatica : アジアの という意味
ゴバンノアシはマダガスカルから太平洋諸島まで、広くアジアに分布している。
indica などという特定の地名ではないので、複数の場所からリンネの元に標本あるいは情報が届いたのだろう。

Barringtonia サガリバナ属 : 人名から
18世紀イギリスの博物学者、バーリントン (1727-1800) を記念して名付けられている。 約40種があるという。

サガリバナ
長い花序が垂れ下がるところから名付けられたもの。
本来 サガリバナの花は夜の間に咲き、朝には花が落ちてしまう。
 
ゴバンノアシの花は、サガリバナとよく似ている。
サガリバナ


沖縄本部町、
国営沖縄記念公園の植物園
リンネは ゴバンノアシ を『植物の種』(1753) 512ページに、オトギリソウ科の マンメア Mammea 属として記載している。
 
本文は一行しかないが、長い注釈(解説)があり、そこには Fructus tetragonus と果実が四角いことも記載されている。
 
オトギリソウ科の植物で馴染みがあるものとしては「マンゴスチン」や、ヒペリクム属の「ビヨウヤナギ」、「キンシバイ」がある。
 
サガリバナ属が定義されたのは少し後の 1785年であり、さらにゴバンノアシがサガリバナ属に変更されたのは 1875年であった。

サガリバナ科 Lecythidaceae :
パラダイスナットノキ属 Lecythis属 を基準属とする。
その由来は「油壺 oil pot」あるいは 壺・甕 という意味で、この属の果実が壺状の形をしていることにちなんでいる。
 
モンキーポット の項 参照。

参考文献 : Species Plantarum 復刻版/植物文献刊行会
        Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        日本大百科全書/小学館
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ