ナンバンサイカチ 南蛮p莢
Cassia fistula Linn. ( 1753 )
科 名 : ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae
(マメ科 Fabaceae)
属 名 : ナンバンサイカチ属
Cassia Tourn. ex Linn. ( 1735 )
英語名 : golden-shower tree , golden-rain , pudding-pipe tree
原産地 : 熱帯アジア
『園芸植物大事典』では不明となっている
用 途 :
 
美しい花を多数付けるために、世界の熱帯・亜熱帯で広く植栽される。
果肉を下剤として使用する。
撮影地 :
ドミニカ共和国 、ジャマイカ
パキスタン 、日本 奄美

ナンバンサイカチは成長すると 10〜20mにもなるそうだが、この木は一部が枯れているようで、元気がなかった。

撮影したのは3月末、乾期が終わる頃である。事典には夏に花が咲く、とあるので本来の花時ではないのかも知れない。
ドミニカ植物園のナンバンサイカチ

 
つぼみの様子 花の様子

 
垂れ下がる花序が、まるで金色のシャワーのよう というのが英語名 golden- shower tree の由来であるが、ほそぼそと 2・3房が咲いているだけの状態では、まったくイメージが湧かない。

いい匂いがするそうだが、残念ながら手の届かないところに咲いていた。
葉の色がまだ黄緑色で、開いて間もない様子だ。
 

ジャマイカのホープ植物園には、かなり大きなものがあった。
幹の直径 約50cm。
同じ時期であったため、やはり花はほとんど咲いていなかったが、昨年の花の実が生っていた。
 
ジャマイカのナンバンサイカチ 葉の様子

 

 
豆果 (実)


サヤは通常のマメとは違う「円筒状」である。

長さは、写真に写っているもので、37〜43cm。
太さは 2cm程度であった。

折ってみると、中は短い円筒状のセルに分かれており、その間には隔壁(本種の場合、正確には疑隔壁)がある。種子はセルの中に入っている。


シャワーのように たわわに咲いている状態を見る事ができたのは、ハワイだった。
ワイキキ フォスター植物園        2013.7.7

 

奄美大島中部の「奄美アイランド」でも、見事に垂れ下がった果実を見たことがある。
 
奄美のナンバンサイカチ



 
撮影したのは4月上旬。 花はいつ咲くのだろうか。

葉は、ジャマイカのものに較べると、つやつやしてきれいだ。
偶数の羽状複葉である。
 
名前の由来 ナンバンサイカチ Cassia fistula
 
和名: ナンバンサイカチ : (南方から) 渡来したサイカチ の意味
しかし!  サイカチ と ナンバンサイカチ の外観は、似ても似つかぬ別物である。

サイカチは日本にも自生している落葉樹であるが、その最大の特徴は、茎が変化したという「鋭いトゲ」。
 
幹に生じる サイカチのトゲ 花と実の様子


水道橋近くの皀角坂で

 
共通点は、偶数の羽状複葉ということだけである。

それでは、なぜ ナンバン「サイカチ」と名付けたのか?
 

サイカチは漢方でその果実を「p角子 (ソウカクシ)」といい、利尿、去痰薬として使われていた。

一方、ナンバンサイカチの果肉は下剤として使われるという。

薬効は違うが、同じマメ科の植物の実を薬として利用するということで、「ナンバン ソウカクシ」と名付けたものが、ナンバンサイカチに転訛した。

というのが、私の推論である。
 
種小名 fistula : 管形の という意味
ナンバンサイカチの円筒形の長い果実を示している。

リンネは『植物の種』 377ページに記載しており、原産地はインド・エジプトとなっている。
 
Cassia カッシア属・ナンバンサイカチ属 : 
『園芸植物大事典』によると、シナニッケイの学名 Sinnamomum cassia 和名ケイ(桂) の種小名部分を「転用した」もので、ヘブライ名 gasta に由来し、皮を剥くという意味であるという。

Sinnamomum cassiaSinnamomum verum セイロンニッケイと同様に、樹皮を香料として利用するためである。

Index kiwensis によると、カッシアという属名はトゥルヌフォール(1656-1708) が定めていたものを、リンネが『自然の体系』第一版(1735) で記載したことになっている。

ところが、
シナニッケイの学名は1826年、ブルーメ (1796-1862) による記載であるため、年代的に『園芸植物大事典』の記述と矛盾する。
 
Sinnamomum cassia ケイ」の学名が記載される以前から、ニッケイ類の呼び名として「cassia」が使われていたのであれば、「ニッケイ あるいは 桂皮の古代名に由来する」ということで説明が付く。
 
ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae : 
属名 カエサルピニアは、ローマ法王クレメンス8世 (在位1592 - 1605) の侍医で植物学者の、チェザルピーノ (A. Cesalpino ラテン語の綴り Caesalpinus) を記念している。
 
ジャケツイバラについては 別項を参照していただきたい。

ナンバンサイカチ ← サイカチ p莢
別項として掲載しました。
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        漢和中辞典/角川書店
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