ベンガルヤハズズカズラ ベンガル矢筈蔓
Thunbergia grandiflora Roxb. (1820)
科 名 : キツネノマゴ科 Acanthaceae
属 名 : ヤハズカズラ属
Thunbergia Retz (1776)
英語名: Bengal trumpet , blue skyflower
blue trumpetvine
原産地 : カンボジア、タイ、ミャンマー、中国南部、
インド・アッサム地方、シッキム地方 など
用 途 : 熱帯や亜熱帯地方で、庭木として植えられる。 日本では沖縄では路地でOK。
関東ではよく温室で見かける。
撮影地: ポルトガル 、ドミニカ
日本 沖縄、温室

ヤハズカズラ属の中では最もポピュラーなもの。 大きな青い花が美しい。
『園芸植物大事典』によると、葉の形が二種類あるようだが、各地で見たものを較べてもそれぞれが どちらのものか、はっきりとはわからない。

                 生け垣スタイル(リスボン植物園)         2009.10.1
つる植物という性格上、壁に這わせたりパーゴラ作りにすることが多いが、リスボン大学植物園では 生け垣状にしていた。

葉は対生
一番の特徴は、葉の付け根が凹んでいる「心臓型」。 細長くて先の方には鋸歯がないのは『園芸植物大事典』のいう 仮称「B型」である。 このタイプの方が普及していて、A型よりも花が大きく色も濃いそうだ。

よく似た同属の ローレルカズラ T. laurifolia は、葉の基部が心臓型にならず、葉柄も極端に短い。 『園芸植物大事典』

つぼみの様子
萼のように付いているのは2枚の「苞」である。 これを「矢筈」になぞらえている。 左側は 苞から花が出てきたところ。

2011.6.14 (板橋 熱帯環境植物館)      前から 後ろから        (リスボン植物園) 2009.10.1 
花の直径は 約5cm。 5つに分かれる花弁は線対称となっている。 
中心部は黄色。 

苞の内側にある萼は 退化してリング状になっている。 (印)

                 沖縄 南東植物園           2000.10.28
見事なトンネル。 このように藤のような垂れ下がる状態になることも多い。
古い撮影なので、色がうまく再現されていない可能性がある。


名前の由来 ベンガルヤハズカズラ Thunbergia grandiflora

和名 ベンガルヤハズカズラ : 原産地のひとつを表す。
ベンガル地方に産するヤハズカズラの意味。 実際の自生地は広い。
命名者の William Roxburgh (1751-1815) はスコットランドの軍医、植物学者で、インド植物の父といわれている。
William Roxburgh
Wikipedia より
 
1793年にカルカッタ近郊にあった東インド会社植物園の園長となり、1814年には植物園のカタログとして『ベンガルの植物』、正式名称 『Hortus Bengalensis, or a Catalogue of the Plants Growing in the Hounourable East India Company's Botanicl Garden at Calcutta. Serampore』を刊行した。 
それに本種が記載されているのだが、現在の植物命名規約が定めている記載内容に合っていなかったためか、正式名称とはならず、いわゆる「裸名 nomen nudum 」である。

学名はともかくとして、この経緯から英語名に Bengal trumpet や Bengal clockvine があり、和名はそれを参考にしたもとの思われる。
 
種小名 grandiflora : 大きな花の の意味
命名時の19世紀初めまでに、何種類のヤハズカズラ属が存在したかは不明だが、少なくともヤハズカズラ属の中では 当時一番大きな花だったということだ。
 
ヤハズカズラ属 :
ヤハズカズラ属は熱帯・亜熱帯の植物で、初めて日本に伝えられたのがヤハズカズラ : Thunbergia alata のようだ。
『園芸植物大事典』によると 1879年(明治12年)のことである。

alata は「翼のある」という意味で、長い葉柄(葉の柄)に 翼(膜状に張り出したもの)があることに由来する。 写真には写っていない。
ヤハズカズラ
Wikipedia より
 
矢筈は「矢を弓につがえる部分」で、簡素なものは矢そのものに溝を付ける。 別途 竹・木・角・金属・水晶などで部品を作り、矢に取り付ける「継筈」もある。

ヤハズカズラの写真は前掲の1枚だけなので、「コダチヤハズカズラ」で代用するが、花を包む2枚の「」を 「矢筈」に見立てた命名である。
キツネノマゴ科 Acanthaceae
キツネノマゴ科の「基準属」は ハアザミ属 Acanthus であるが、科の和名はキツネ...。 なぜだろうか...。

アカンツス属の植物は地中海沿岸、熱帯アジア、熱帯アフリカなどの原産で「ハアザミ」と言われても馴染みがない。このため、代わりに数少ない国産の本科のひとつ、キツネノマゴを科名としたものと思われる。

キツネノマゴについては、「ベニサンゴ」の項の記述を参考にしていただきたい。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        Wikipedia
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